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  メイドの歴史  


今や誰もが知っている言葉となった「メイド」。
しかし、その歴史や形態について知っている人は意外に少ない。
ここでは、そのメイドについてより深く知るために、いくつかのポイントを紐解いていこう。

ヴィクトリア朝/歴史/メイドについて/メイド連合協会(MUS)/アナザー・ワン/
捧士と捧剣
/三大財閥
/ビスクドール/ヴィクトリア/メイドのミヤゲ
 ヴィクトリア朝 【The Victorian】
イギリスにおける、ヴィクトリア女王の在位(1837 〜 1901)した時代であり、大英帝国の絶頂期でもある19世紀を指す。

この頃の英国は国内でのメイドの雇用率もピークであり、その結果ヴィクトリア様式のメイドがそのデファクトスタンダードになったものと考えられる。
ヴィクトリア朝は産業革命と自由貿易によって変化と革新に彩られ、イギリスの国力が最も充実した時代である。
反面、古い生活習慣と階級社会も根強く、特に「階級の上昇志向」が極めて高いという特徴があった。

人々は少しでも上層の階級に加わる事を願い、その為には多少の無理を伴ってでも、自分を実際より上流に見せようとした。
スノビズム>氛氛沍セってしまえば、「紳士気取り」の風潮があったのである。
そしてその紳士のステータスの一つに「使用人を雇うこと」があり、男性使用人に比べ賃金が半額以下だった女性使用人の雇用は加速度的に進むことになった。
こうして、女性使用人───つまりはメイドの姿が多く見られるようになり、この時代の英国の背景を彩っていったのである。

 この時代の主な英国の動き
1851年 万国博覧会がロンドンのハイドパークで開催され、国際的な注目を集め成功裏に終わる。
1858年1月 パーマストン卿がフランス皇帝ナポレオン三世の謀殺を試みたオルシーニの陰謀の処理にあたったが、その結果生じた騒動により辞任に追い込まれる。
1866年7月 ラッセルの総理大臣辞任を要求したロンドンの群集がハイドパークから警察によって排除される。この騒動により、ダービーとディズレーリはさらなる議院改革の必要性を確信する。
1875年 エジプトがその負債を支払う資金を捻出させるため、英国はスエズ運河のエジプト領土を購入する。
1882年 英軍が最重要貿易路でありインドへの通路でもあるスエズ運河を囲む地域を占領したのち、エジプトは大英帝国の保護領となる。
1884年 ロンドンの中流知識階層の一団が社会主義の発展を目指してフェビアン協会を設立。クエーカー・エドワード・ピーズ、ヘイブロック・エリス及びエディス・ネスビットが参加していた。ジョージ・バーナード・ショー、H.G.ウェルズは後にこの会に参加することになる。ちなみにH.G.ウェルズは、タイムトラベルを題材にした有名なSF小説、「タイムマシン」の作者である。
1887年11月 13日の日曜日、多くが社会主義者と失業者から成る数万人の群衆が集結し、政府に対してデモを行った。市警察長官は武装した兵士と2000名の警察官に処理を命じたが、暴動が発生し、数百人の負傷者と2人の死亡者が発生した。この事件は「血の日曜日」事件と名づけられた。
1888年 「切り裂きジャック」として知られる殺人犯が娼婦を殺し死体を損壊する事件が相次ぎ、ロンドンを恐怖のどん底に突き落とした。新聞はこの死神を利用して、失業者の苦境に注目を集め、警察と政治的指導者を攻撃した。殺人鬼は結局捕まらず、真相は闇の中となった。

 ●メイド【maid-servant】


メイドは正しくはメイドサーヴァントといい、「家政婦」や「女中」など、様々な訳され方をする。
一般的に「メイド」は家事の全てを担う者、と思われがちだが、実際はそうではない。
本来その職種は多岐多様に渡っており、メイドを雇う家庭の程度によって、構成人数や仕事の割り振りは以下のように変わってくる。

・ハウス・キーパー 【House Keeper】

女中頭。俗にメイド長と呼ばれる者。
その職務は館における家政全ての指揮・監督と使用人の統率にあり、メイドの階級において最上位に位置する。
・レディース・メイド【Lady's Maid】

侍女。主人の身の回りの雑用をするメイド。
本来は貴婦人の側に仕えてその世話をする役割を持っていたので、こう呼ばれる。
・パーラー・メイド【Parlour Maid】

客間女中。来客の取次ぎや、客間での食卓の準備や給仕を行うメイド。
その職務の性格上、主人や客人の前に出る機会が多いため、容姿の整った者が好まれた。一般的に、メイドの花形と呼ばれた職種。
・ハウス・メイド【House Maid】

家女中。女中頭の指揮のもとで、館の管理に必要な作業を行うメイド。
部屋の管理や掃除など、主に屋敷を清潔に保つための仕事を受け持っていた。
・ナーサリー・メイド【Nursery Maid】

子守女中。乳母の補佐をするメイド。
家の子どもの着替え、運動、食事の面倒など育児に関する全権を持っていたため、子どもの人格形成に大きな影響力を持っていた。
・ランドリー・メイド【Laundry Maid】

洗濯女中。洗濯場にて洗濯を行うメイド。
しかし相当裕福な家でなければ、個別に雇われることは少なかった。
・キッチン・メイド【Kitchen Maid】

台所女中。料理人(Cook)の下で厨房の作業を行うメイド。
厨房の準備や料理の下ごしらえ、簡単な料理などが主な仕事。
・スカラリー・メイド【Sculler Maid】

洗い場女中。洗い場で食器を洗うメイド。
当時の貴族は食事の回数が多く、頻繁に晩餐会なども開いていたので中々に重労働な職種だった。
・メイド・オブ・オールワークス【Maid of all works】

雑役女中。仕事の内容は「雑用」、すなわち全ての仕事を受け持つメイド。
財政上の理由から多くのメイドを雇えない家では、このオールワークスが一人で仕事を行う。
当然重労働であるが、ヴィクトリア期に存在したメイドの5分の3がこの職種である。
世間一般のメイドのイメージとしては、このタイプが該当する。

このように、一口で「メイド」と言ってもその職種は多岐に渡るのである。
………そして、いま説明したメイドの階級の中に、ひとつ隠されたクラスが存在する。

───Another One=Bそれが、全てのメイドのクラスにおいて頂点に君臨する、スペシャルクラス。このアナザー・ワンについては、後ほど説明しよう。





 舞台設定 




メイド連合協会 【Maid Union Society】

まだ一般にはあまり知られていないが、我が国では「メイド」は一つの職種として確立している。
世間の知名度が低いのは、実際にメイドを雇うのが限られた上流階級の人々だけである為と考えられる。
メイド達を育て上げ、その職種に応じて適切な環境へと送り、依頼主との契約を一括して執り行う組織。
それが「メイド連合協会」、通称MUSである。
MUSの本部はメイド発祥の地のイギリスにあり、各国にその支部が存在する。
欧州に比べるとアジア圏はまだ少ないが、日本はアジアで一番最初にMUS支部を置かれた国でもある。
これは日本で「メイド喫茶」なるものがブームにあり、メイドの理解が他の国に比べて早かった為という話もあるが、真意のほどは定かではない。
MUSはメイドの専門学校とも言うべき機関を持ち、そこで未来のメイドを育て上げるべく日々教育を行っている。
メイドの職種によって講師や環境を個別に用意し、各方面のプロフェッショナルを目指しているあたりが、専修的な学校と近いものになっている。
そこで全ての教育を終えたものは晴れてメイドとなり、MUSが審査した依頼主……つまりは主人の下へと赴く事になるのである。

……そして、MUS最大の特徴のひとつと言えるのが、隠された特別階級「アナザー・ワン」の存在である。

 ●アナザー・ワン【Another One】
MUSの誇る特別階級。全てのメイドのクラスの頂点に君臨するクラスでもある。
ヴィクトリア期、メイドの花形はパーラーだと言われたが、時代や思想の変革とともにそれも変わっていった。
単一の仕事しか出来ない者よりも、全てをこなせる者が優遇される。能力重視の流れと共に、現代では雑役女中と呼ばれた「オールワークス」こそがメイドの花形と呼ばれるようになった。
そしてアナザー・ワンとはオールワークスのさらに上に位置し、全ての仕事に加えてある特別な「役目」を担っている。

それは───主人を、護ること=B

その尊い職務こそがアナザー・ワンの使命であり、MUS最難にして最強のクラスと呼ばれる所以である。
近年、上流階級の貴族たちは様々な問題に直面していた。
財閥同士の抗争に始まり、家中での跡目相続にまつわるお家騒動、そして上層階級ばかりを狙う専門の強盗の増大。
そういった脅威から当主を守る手段を講じるのは、まさに急務であった。
そこでMUSは、常に主の傍らに仕えるメイドこそが、脅威のカウンターに成り得ると発案した。
そうして生み出されたクラスが、主を護る盾にして外敵を打ち滅ぼす剣、「アナザー・ワン」。
他のクラスと一線を画する任務を持ったこのクラスは、文字通りの別のひとつ≠意味する特別階級なのである。

 ●捧士(ほうし)と捧剣(ほうけん)
アナザー・ワンには、外の脅威から主人を護るための武器がMUSより与えられる。
それは、身の丈ほどもある「大剣」である。それを帯剣することがアナザー・ワンの証であり、同時にシンボルであるとも言える。
また、アナザー・ワンは捧士≠ニも呼ばれる。これは「両手で剣を捧する」という意味と、メイドのもつ奉仕の心からそう称されるようになったものらしい。
捧士のもつ大剣は「捧剣」と呼ばれ、己の主を護る用途にのみ振るわれる。
そして特徴的なのが、MUSの用意する捧剣は全て神話や伝承に登場した伝説の武具たちなのである。
MUSにはそれらを回収する機関も擁しているらしいが、詳細は明かしていない。
それらの剣を贋作だと述べる者達も多いが、アナザー・ワンの所有する捧剣が絶大な力を持っていることだけは間違いない。
次項で、その捧剣をいくつか紹介する。→
『 伝説の剣 』

 ●三大財閥
我が国には、「三大財閥」と呼ばれる三つの代表的な財閥がある。
神楽堂家、環家、郁葉家の三家がそれだ。
この三つの財閥は、微妙なパワーバランスのもとに成り立っている。
それではこれらの一族について、簡単に説明しよう。

【神楽堂家】
神楽堂家はまだ比較的若い財閥ではあるが、その名は上層階級の世界においては有名である。
その最たる理由は、神楽堂家の当主が代々豪放磊落な人物であったことが挙げられる。
上流階級の人間というのは、古き体質や伝統に拘りを持つお歴々が多い。
しかし、神楽堂家の当主は代々そういったものには特別興味が無く、
むしろ新しい風を積極的に取り入れてジェントリの世界を広げていこうとする姿勢がみられる。
当然、そのような神楽堂家を良しと思わない家も多いが、
それ以上に狭いこの階級に風穴を明けようとしている神楽堂家に期待している家が大勢いるため、上流階級において神楽堂家の発言力はかなり高いものとなっている。

ただ、神楽堂家の当主はあまり社交界には顔を出さない。
その理由は、「めんどくさいから」という事らしい。………さすがは神楽堂家当主、である。

【環家】
神楽堂家が良い意味で有名なら、環家は悪い意味で有名な一族である。
環家は財力だけで言えば神楽堂家と郁葉家を凌ぎ、この国で随一の富力を誇っている。
しかし、環家の人間は表の世界に極端に出たがらない。
神楽堂家も社交界にはあまり顔を出さないが、環家の場合は異常とも言えるほどに「閉鎖的」なのである。
環家は外の世界には殆ど関心を示さず内にこもり、豊富な財力を使って独自の研究に没頭しているらしい。
研究内容は錬金術の精製から呪術の解明、アンドロイドの製造など多岐に渡り、そのどれにおいても高い結果を残しているという噂がある。
魔剣の継承家でもある環家には黒い噂が絶えず、社交界でもその名を口にすることはタブーとされている。
上流階級の名士達は、そんな環家を畏敬と畏怖の念を込めて“高麗剣”(こまつるぎ)と呼んでいる。

また、神楽堂家と環家の間には数世代前からの因縁があり、特に環家は神楽堂家に強い敵意を持っていると言われている。

【郁葉家】
癖のある神楽堂家、環家に比べて、郁葉家は最も「正しい」名家とも言うべき財閥である。
それぞれの理由で社交界に顔を出さない神楽堂と環の両家と違い、
郁葉家は上層階級における社交の重要性をきちんと理解しており、招待には必ず応じる礼節さを備えている。
我が国で最も歴史のある財閥の郁葉家は、「品格、知性、礼儀」を正しく揃えた理想的な名門であると言えるだろう。
礼節を重んじる郁葉家は和様に拘りがあり、本邸である屋敷は武家屋敷さながらといった純和風な様相をしているらしい。
また、郁葉家は神楽堂家と環家の微妙な関係を理解し、中立的な立場を取り続けている。
郁葉家の動向一つで財閥同士のバランスが崩れてしまう為、温厚な人物として知られる郁葉家当主の取った判断は正しいと言える。
ちなみに郁葉家当主と夫人は、おしどり夫婦としても有名である。
温柔な郁葉家当主と、積極的で決断力のある夫人は一見正反対ではあるが、だからこそお互いにうまくいっているとの事らしい。

また、手塩に掛けて育てた郁葉家の一人娘が現在家出をしているという噂もあるようだが、真偽のほどは定かではない。

 ●ビスクドール【Bisque Doll】
ビスクドールとは、環家の造り出した主に戦闘に特化したメイド型アンドロイドの総称である。
独自の研究機関を持ち、規格外の技術力を持つ環家は自律型アンドロイドの製造にすら成功していた。
そうして完成したアンドロイドのうち、「戦闘用」で「メイド型」の特徴を備えた機体を二度焼き≠フ意味を持つビスクドールと呼ぶのである。
何故「メイド型」であるのか。それは、環家がMUSの誇るアナザー・ワンに対する“アンチテーゼ”としての意味を持たせる為であると言われている。
MUSが提唱した、常に主の傍に仕えるメイドこそが脅威のカウンターに成り得る、「アナザー・ワン」というクラスの存在。
上層階級の人々を守る為に発案されたこの制度を、一部の富豪達は快く思わなかった。
それは「女中如きに主を守らせるとは何事か」という、旧弊な体質に強く縛られた歴々の総意だった。
元々MUSの存在が目障りだった環家は、そうした富豪達を集めて自ら陣頭指揮を取り、『アンチ・アナザー・ワンプロジェクト』───ビスクドールの開発を開始したのである。

ビスクドールはMUSの誇る最強機関、アナザー・ワンに対抗する為に造られたため、その戦闘能力は非常に高いものとなっている。
また、ビスクドールが脅威と言われる大きな理由の一つに、「戦闘データ」の引き継ぎがある。
ビスクドールはたとえアナザー・ワンに破れたとしても、その際に経験した戦闘データを次機のビスクドールにそのまま引き継ぐことが可能となっている。
その為、新たに造られたビスクドールは初めから高い戦闘能力を備えている形になり、精鋭といわれるアナザー・ワンすらも苦しめる事になるのである。
MUSでも環家には警戒を強くしており、一触即発の雰囲気が漂い始めている。

なお、現段階での最新型のビスクドールは七体目の機体であり、「戦車」(Chariot)の異名を持つと言われている。

 ヴィクトリア
「ヴィクトリア」とは、最も優れたアナザー・ワンにのみ贈られる最高の称号のことである。
かの女王の名を冠したそのタイトルを持つメイドは、One of the Another One≠ニ称され、最優にして最強の存在と謳われる。
ヴィクトリアは、それまでの功績や資質などをイギリスにあるMUS本部で審理され、適正と判断されると「カセドラル」と呼ばれる本部内の聖堂においてその名を任命される。
その場において、ヴィクトリアには「ヴィクトリア・クロス」と呼ばれる唯一のメイド服とヘッドドレスが授けられるのである。
だが、その栄光への道は果てしなく狭く険しい。
メイド本人の才力や風格は勿論のこと、持ち剣である捧剣のランクなども考慮されるため、単純な力量だけでは決して辿り着けない地位となっている。
ヴィクトリアには各国の君主や最高権力者たちが挙って奉仕を求めると言われ、そのメイドがどれだけの存在であるかが解るだろう。

ヴィクトリア>氛氛氓サれはMUSに所属する全てのメイドにとって尊敬と羨望の存在であり、同時に栄光と君臨の象徴なのである。

なお、現ヴィクトリアは第56代であり、アジア圏からはまだ一人もヴィクトリアは誕生していない。

 メイドのミヤゲ
アナザー・ワンの持つ“切り札”。
これが扱えるからこその特別階級であり、己の持つ捧剣の力を最大限に解放した最強の一撃である。
その攻撃の特徴や効果は担い手やその捧剣により様々だが、そのどれもが凄まじいまでの破壊力を秘めている。
効果範囲の広いものであれば、町の区画ひとつを吹き飛ばすほどの威力すらあるという。
主を護るという崇高な職務を持つアナザー・ワンには、敗北は許されない。
それ故に、アナザー・ワンには何物にも勝る最大の攻撃手段を持つ必要があった。
MUSでの厳しい訓練を受け、自ら鍛練を積み、そうして己が捧剣と真に解り合えたとき、初めてその絶技を手にすることが出来るのである。
もしも、それを使いこなす者同士の闘いになった場合、激戦は避けられない。
アナザー・ワン同士の闘いとは、最終的にはメイドのミヤゲのぶつかり合いになるのだから。

……なお、この「メイドのミヤゲ」というネーミングには、MUS内(というよりアナザー・ワンから)でも当然のように賛否が飛び交った。
いや、不賛成の方が圧倒的に多かったのだが、道楽者として知られるMUSのオリジネーター(創始者)の鶴の一声によって可決されてしまったらしい。



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